【ネットリサーチの基本】調査票設計は「誰に?」「どれぐらい?」「何を?」の3つの柱が必要!
今回はネットリサーチにおける「調査票作成」について解説します。
調査の目的を達成するために、どんなことに気を付ける必要があるのか、どんな流れで組むのがよいのか、3つの重要な柱を交えてお伝えできればと思います。
調査の目的を整理する
なぜネットリサーチなのかを確認する
まず、大前提となりますが調査の目的を整理します。
調査の背景、目的、課題を箇条書きなどでまとめることで思考が整理され、調査会社への依頼もしやすくなります。
調査会社もこの背景、目的、課題のヒアリングをとても大切な仕事となります。
- 背景は、わざわざお金やマンパワーを投資して調査をしようと思った理由となります。
- 目的は、今回の調査からどのような結果を得たいかということです。調査は目的ではなく手段です。調査結果を活用して、商品開発をしたいのか?バイヤーや上司への説得材料にしたいのか?など、調査結果の使い道を指しています。
- 課題は、そのアイテムやサービスの課題を指しています。内部の視点、外部の視点、競合の登場、自社の中でのカニバリなど、調査をしようと思った背景にもつながる部分となります。
以上3点を整理した上で、それでも「ネットリサーチ」を活用すべきか一旦考える必要があります。
以下の関連記事でも書いた通り、定量調査(ネットリサーチなど)の主な目的は仮説の検証や数字的な検証となります。仮に調査目的が「一人一人の生活を深堀して、ペルソナを作りたい」ならばネットリサーチは向いていません。そこまでの深堀が出来ないからです。
sassykao.hatenablog.com
ネットリサーチの特徴を知る
これはネットリサーチだけでなく定量調査全般に言えることですが、「聞いたことしか分からない」ということを肝に銘じておくことが重要です。
当然ですがアンケート設問で聴取した内容しか集計や分析はできません。例えば、アンケートで以下のような設問を設定したとします。
Q.あなたはサッカーが好きですか?
選択肢1.好き
選択肢2.どちらともいえない
選択肢3.嫌い
この設問で「選択肢1.好き」の回答比率が30%だとします。
確かに世の中の3割はサッカーが好きだと解釈は出来そうです。しかし、この”好き”というのは「サッカーをプレイするのが好き」「サッカーの代表試合を見るのが好き」「サッカーゲームが好き」など理由はいろいろだと思います。 定量調査では聞いたことしか分からないので、どのような理由でサッカーが好きなのか?その理由をこの設問だけで解釈するのはかなり危険です。(ミスリードする)
一方、定性調査のインタビューは行間を読んだり、インタビュー対象者自身から能動的に言葉が出ることがあるので、「聞いたこと以上のことが分かること」が多々あります。
(例)
インタビュアー:佐藤さんはサッカーは好きですか?
佐藤さん:はい、好きです。小学校からサッカークラブに入ってて、今でもフットサルをやったりしています!もっぱらやる方で、試合はあんまり見ないんですよね~。
どうでしょうか?これなら佐藤さんは「サッカーをやるのが好きで、見るのはあまり好きじゃないんだな。」ということが把握できると思います。実際のインタビューでは佐藤さんの声のトーンや表情などからより鮮明に把握できます。
繰り返しになりますが、ネットリサーチは聞いたことしか分からない、ということを理解した上で調査票を設計する必要があります。
1つ目の柱:調査対象者を決める(誰に?)
アンケートを配布する対象者の選定も重要です。女性向け商品なのに男性にアンケートを取っても意味がないように、調査目的を達成するために誰に聞くのか?を整理していきましょう。
属性情報
調査の目的が整理出来たら、次にアンケートの対象者を考えます。まずは、基本属性をベースに考えるとスムーズで、調査会社も必ずヒアリングする内容です。
<基本属性>
- 性別(LGBTQも配慮した選択作りが必要)
- 年齢
- 未既婚
- 居住地
- 同居家族
固有の条件の整理
属性情報の整理が明確になったら、個別の条件を考えていきます。
<個別条件の例>
- 自家用車で週1回以上運転する方
- 犬を2匹飼っている方
- ブランドAを3回以上リピート購入している方 など
個別の条件はその調査の目的によって十人十色です。
しっかり精査して設定する必要がありますが、あまりにも条件が細かいと対象者の確保が難しくなり、想定外のコストやスケジュールが発生したり、予定していたサンプルが回収できないことがあるので注意です。
<条件が細かすぎる例>※ちょっとオーバーな例です苦笑
- 香川県生まれで現在は東京世田谷区に在住している子どもがいる20代女性
- 外車を3台以上所有している10代男性
2つ目の柱:回収数を決める(どれぐらい?)
サンプル誤差の確認
さて、アンケートの目的や対象者条件の整理ができたら、次に考えるのでは回収するサンプル数(何人からアンケートを回収するか?)になります。
一概に答えはないのですが、1つの視点として”サンプル誤差”という切り口があります。これは「アンケートを回収した際に発生する誤差」を指しており、データの信頼性にも影響します。例えば、Aというブランドの購入意向が80%、Bというブランドの購入意向が75%だったとします。一見、ブランドAの方が購入意向が高いと読み取れますが、もしここに誤差10%が発生したらどうでしょうか?
- ブランドA:80%±10%=70~90%
- ブランドB:75%±10%=65~85%
これはアンケートを回収した時期やその他の要因によって、ブランドBの方が購入意向が高くなることを示唆しています。
この例では分かりやすく誤差率を10%としていますが、この数値は大きいでしょうか?小さいでしょうか?数字の大小は個人の感覚によりますが、感覚的に10%の誤差はでかいと感じる方が大半なのではないでしょうか?
王道は1属性○○サンプル!
では誤差は何%ぐらいだったら小さい、もしくは許されるのでしょうか?
この議論に正解はないのですが、統計学やアンケート業界では「5%の誤差は許す」というスタンスが殆どです。
そして、最大誤差5%に抑えらえる条件として「400サンプル以上取れば誤差は5%以内に収まる」という考えがあります
※正確には統計学に基づく計算式がありますが、今回は割愛します。
従って、アンケートの回収数で悩んだら400サンプル回収を目標にする、というのが分かりやすい指標になります。
最低回収数は○○サンプル!
400サンプルが1つの指標という話をしましたが、定量的に分析する上で最低の回収はどれぐらいか?という議論もよく耳にします。
残念ながらこれも決まった答えやルールはないのが実情です。通例として「30サンプルが分析する上でのミニマム」とがありますので、この指標を参考にすることをお勧めします。
3つ目の柱:調査票の大枠を決める(何を聞く?)
最後に調査票の大枠を考えます。ラフ案を考えるイメージでアンケートのストーリーや調査結果を使う場面を想定しながら作るとよいです。
設問数
まず、どれぐらいの設問数で組むかを考える必要があります。
アンケート会社の見積もりは設問数で変動することが大半のため、予め設問数を想定しておかないと概算見積もりも作れないのです。
これは私の肌感覚ですが、15問前後が無理なく回答できる限界設問数だと思います。
流れを決める
次にアンケートの流れ・ストーリを考えます。
色々コツや工夫はあるのですが、私が意識している点は大きく以下2つです。
- 【事実】から【意識・仮説】の順に組む
- 行動する順と同じように組む
<【事実】から【意識・仮説】の順に組む>
心理学的な側面もありますが、アンケート回答者にいきなり【意識】やアンケート設計者の検証したい【仮説】をぶっこむのはお勧めしません。回答者の意識がまだアンケートモードになっていないので、重要な部分が曖昧な状態での回答になってしまうのです。まずは回答がしやすい【事実】から聞いていくことで、頭が温まっていくのです。
【事実の例】
- 同居家族は?
- 仕事内容は?
- 購入している飲料は?
【意識・仮説の例】
- ブランドAが好きな理由は?
- ○○という新商品について、評価できる点はどこ?
- △△というサービスの改善点はどんな点だと思う?
<行動する順と同じように組む>
もう1つのコツは行動する順番と同じようにアンケートを設計することです。
例えば、ブランドAの利用実態を把握したいのが目的の場合は以下のような設計が回答者はストレスなく回答することが出来ます。
- 認知経路
- 購入チャネル
- 比較検討商品
- 決定要因
- 購入価格
- 利用シーン
- 利用満足度
- リピート意向
- 廃棄方法
設計のコツ
実際にアンケートの設問を組むには細心の注意と技術が必要になります。
”漏れなく重複なく”というスタンスのもと、アンケート回答者全員がキチンと回答できるように選択肢を網羅的に設定し、恣意的にならない様にランダムに表示させるなど、それなりの知識や工夫、技術が必要になります。
作成したアンケートは上司や同僚、家族など第三者視点でのチェックを行い、必要に応じてプレ調査を行い微修正を加える必要があります。
アンケートに自身がない方は是非調査会社に依頼をしてみてください。
今回は以上となります。
次回、調査票設計のコツの部分を深堀しようと思います!
それでは~。